
横領罪(業務上横領罪)の上記特徴に関連して、侵害した財産上の利益の回復ができるかどうかがポイントとなってきます。
横領罪(業務上横領罪)は、親告罪ではないものの、被害者との間で示談を成立させることが情状として極めて重要です。
まずは、横領した財物の現状(金員の場合は費消済みかどうか、動産の場合は転売済みかどうか)を確認します。
次に、被疑者のみでは被害弁償が不可能である場合には、返済原資の協力が可能な第三者がいるかどうかを検討します。
その後、弁護人を通じて、被害者との間で被害弁償や示談を試みることになりますが、数年にわたり横領をしていた場合には被害金額も多額になることが多く、一括払いの提案ができない場合には、分割払いの示談を提案する場合もあります。
また、起訴された場合、被害者との間で示談ができていなければ、被害金額によっては、初犯であっても、執行猶予がつかず、実刑になることも十分にありえます。
そのため、早い段階から、被害者と示談交渉を開始するなどして、示談の成立に向けた活動が必須といえます。
なお、(業務上)横領の動機によっては、再犯防止の方法も検討します。例えば、ギャンブル・浪費のために横領をした場合にはギャンブル依存等の治療やカウンセリング、借金返済のための横領をした場合には破産手続開始・免責許可申立等をして二度と犯罪を犯さないように環境を整えることも重要です。