令和5年3月10日から映画「Winny」が全国公開されました。
この事件は、ファイル共有ソフトであるWinnyの開発者が、著作権法違反幇助の疑いで逮捕され、第一審では有罪に、第二審及び最高裁では無罪になった事件で、ご存じの方も多いと思います。
他にも、例えば、いわゆる「ファスト映画」(映画の映像を無断で使用し、短い時間に内容を要約した動画)の公開や、キャラクターケーキの無断製造販売など、著作権法に違反する行為は身近で起こりうるものです。
著作権を侵害した場合の原則的な法定刑は、10年以下の拘禁刑、1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされています(著作権法第119条1項)。また、法人の代表者等が、その法人の業務に関して、著作権を侵害した場合は、行為者を罰するほか、その法人に対して、3億円以下の罰金刑を科するとされています(著作権法第124条1項)。
著作権法違反が刑事事件として起訴されるかどうかは、親告罪と非親告罪の区別が重要です。著作権法違反を刑事事件化するためには、基本的には権利者による告訴が必要(親告罪)ですが、平成30年の著作権法改正により、例えば、海賊版DVDを販売して、その販売代金として利益を得る行為等は、非親告罪となりました。
そのため、著作権法違反のうち親告罪に該当し、争いがない場合においては、弁護人が権利者と示談交渉を行い、示談を成立させ、起訴前に告訴の取消し(刑事訴訟法第237条)をしていただくことが最優先となります。
ちなみに、一度告訴を取り消した場合、再度の告訴はできません。そのため、弁護人は、権利者に対して、そのことを丁寧に説明し、理解していただいたうえで、示談を成立させます。
また、起訴前に告訴の取消しがなされない場合であっても、情状として、被害回復や寄付等が考慮されることがあります。
最近の事案としては、東京地方裁判所令和4年3月9日判決(令和3年(特わ)第2235号、同第2346号)があります。こちらの事案は、美術商の被告人が、主導的立場で、法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、美術の著作物である版画につき、リトグラフ技法により紙に印刷するなどして複製し、著作権者の著作権を侵害し、かつ、版画複製物を著作権者の許諾を受けないで複製されたものであることの情を知りながら販売して頒布した事案において、罪を認め、反省し、被害回復に努め、美術館に1400万円の寄付をしたこと、妻が監督を誓約していること等が考慮され、懲役3年及び罰金200万円、執行猶予4年間の判決となっています。
著作権法違反の刑事事件については、早い段階から、弁護人と相談し、弁護方針を決めて対応することが重要です。
令和5年4月27日
文責 弁護士・弁理士 竹永 光太郎