令和5年3月14日、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案と性的な姿態を撮影する行為等の処罰等に関する法律案が国会に提出され、同年5月9日、衆議院本会議で審議入りしました。改正案の概要は以下の通りです。

 

1、強制性交罪や強制わいせつ罪の罪名・要件の改正

⑴ 罪名について、現行の「強制性交罪」を「不同意性交罪」に、「強制わいせつ罪」を「不同意わいせつ罪」に変更します。

⑵ また、現行刑法では、「暴行・脅迫」が要件とされている点について、①暴行・脅迫の他、②心身の障害、③アルコール・薬物の摂取、④意識が不明瞭、⑤拒絶するいとまを与えない、⑥恐怖・驚愕、⑦虐待、⑧経済的・社会的地位の利用により、同意しない意思の表明が困難な者と性交等を行った場合を、処罰対象とします。

⑶ 性交同意年齢について、現行刑法では13歳と定められていますが、16歳に引き上げられます(ただし、被害者が13歳~15歳の場合は、加害者は被害者より5歳以上の年上である者に限ります。)。

 

2、16歳未満の者に対する面会要求等の罪の新設

わいせつ目的で、16歳未満の者に対し、①威迫・偽計・誘惑して面会を要求すること、②拒まれたにもかかわらず反復して面会を要求すること、③金銭の供与等を利用して面会を要求することを新たに処罰対象とします(ただし、被害者が13歳~15歳の場合は、加害者は被害者より5歳以上の年上である者に限ります。)。

 

3、公訴時効期間の延長

精神的ショックで被害者が被害を申告しにくい実態を踏まえ、公訴時効期間が5年延長されます(例えば強制性交罪(不同意性交罪)の場合は、現行の10年から15年に)。

また、幼少期に被害に遭った場合には、被害を認識すること自体が困難であることから、被害者が18歳未満である場合には、18歳になるまでの期間が更に加算されます。

 

4、「撮影罪」の新設

盗撮などの性的な姿態を撮影する行為は、各都道府県が迷惑防止条例で規制されており、刑法には規定がありませんでした。

そこで、国の法律のかたちで盗撮などの撮影行為を処罰する規定を新設し、また、撮影した画像を第三者に提供したりインターネット等を利用して拡散したりする行為等を処罰対象とします。

 

いずれも性犯罪に関する規定が大きく変更される改正案です。政府は今国会での成立を目指す方針であると報道されており、改正されれば、実務に与える影響は大きく、今後も動向を注目する必要があります。

                                           以上